TRPGシナリオ 配布場

クトゥルフ神話TRPGシステムを使ったシナリオを公開しています。一応グロ、精神グロ表現注意です

とおりゃんせが聞こえる

シナリオ名:とおりゃんせが聞こえる(とおりゃんせがきこえる)

 製作者名:ayabumi

 

【はじめに】

こちらは《クトゥルフの呼び声》のTRPGシステムを使用した、現代日本前提のクローズドシナリオです。プレイ推奨人数は1〜3人、プレイ時間は四時間以内になります。

謎解きもない一本道シナリオですが、ロールプレイ重視でかなりのグロ・精神グロ、胸糞要素がありますのでご注意ください。

*このシナリオでは《クトゥルフの呼び声》《マレウス・モンストロルム》を参考にしています。

 

【あらすじ】

晦日の夜、探索者は意識を失い冷たい地面の上で目覚める。身体を起こすと、朱塗りの本殿と鳥居が見えた。どうやらここは神社の境内のようだ。どうしてこんなところにいるのか、探索者には覚えはない。見渡せば、境内からは千本鳥居の一本道が延びている。さて、探索者はどうするのか。

 

【推奨項目など】
・探索者の人種年齢性別職種などに縛りはない、学生探索者でも可能。
・探索者同士が友人知人である必要はない。合流せずとも一応のシナリオクリアは出来る。

・クローズドだが、シナリオ内で所持品制限はほぼない。携帯電話・スマホなどの通信機器の持ち込みも使い道はないが可能。(*ただし、飲食物は導入時に没収紛失される)

・推奨技能は《目星》《聞き耳》《医学》《言いくるめ》《回避》。《応急手当》《心理学》もあればいいが必須ではない。

・戦闘をしようとすれば出来るが非推奨。むしろ出来るだけ戦闘を回避したほうがいい。

 

【シナリオ背景・NPC紹介】

《佐倉 七奈(さくら なな)》

 今年7歳になる少女。年齢相応に子どもらしく、素直で明るく頑張り屋さんの女の子。

シングルマザーの母親のネグレクトにより餓死寸前となり、先に餓死した弟の遺体を食べて生き延びていたところを赤の女王(*ニャルラトホテプ化身)に目をつけられる。かの神に唆され母親を食い殺し、もっとお腹いっぱいになりたいと彼女が願ったので謎空間に招待された。

謎空間内では調理を担当。休憩処の厨房でムーンビーストが運んでくる材料(人間の死体)を調理し、せっせと肉入りごはんを炊いておにぎりを作っている。お客様用のおにぎりやお肉ではあるが賄いとして好きなだけ食べても構わない、と言われているらしい。

・探索者が出会う彼女はぱっと見、ボロ布をまとった小さなグールか餓鬼のようなバケモノの外見をしている。

・彼女の体格体力、知識知能などは五歳児程度を想定。

『STR5、CON3、SIZ5、INT5、POW5、DEX5、APP5、EDU3、HP4、SAN25、幸運25、アイデア25、知識15、回避10』

《製作:料理 60%》《噛みつき 50%/ダメージ 1+1d4》他KPが望む技能

*このシナリオ内において、NPC佐倉七奈に正気度喪失は適用されない。

 

【導入】

12月31日大晦日の夜、探索者は近所の神社へ初詣に向かうために自宅を出る。友人らと待ち合わせをしたのだろうか、または混雑を予想したのかその両方か早めに目的の神社へと向かう。

天気はあいにくの雨。冷たい小雨の中、探索者は歩く。吐く息は白く、指先はかじかんだ。もう少し厚着をすればよかったかと師走の寒さに凍えながら、道行きは自然と足早になっていく。途中、ふと目にとまったのは小さな赤い鳥居。奥には狐の石像を携えたこじんまりとしたお社が。こんなところにお稲荷さんなんてあっただろうかと思い返した刹那、探索者の視界は暗転し意識を失った。

探索者が目を覚ましたのは冷たい地面の上だった。辺りを見回せば、どうやらここはまったく見覚えのない見知らぬ神社の境内らしいと分かった。

*所持品の確認は自宅を出る時点ですること。飲食物を持っていた場合は意識暗転して境内で目覚めた後にもう一度所持品確認をして、持ち込んだ飲食物の類いが全てなくなっているとPLに認識させる。

(*このシナリオ内では空腹判定が最大7回発生するので、飲食物はなるべく持ち込ませないこと)

 #探索者が見知らぬ場所で目覚める SANc 0/1

 

【神社境内・境内周囲】

境内をぐるりと見渡せば、拝殿、拝殿裏に御神木、手水舎、由緒看板、石畳の参道の先に赤い鳥居が連なる道が続いていることが分かる。

・探索者が寝かされていたのは参道を外れた場所、冷たい土の地面だ。

・気温は暑くも寒くもない。探索者の周囲は音もなく、不気味なほどに静まり返っている。

・境内周囲や空は真っ暗であり、その先に地面があるかどうかも分からない。だが光源はないのに境内や拝殿内は昼間のように明るく、まるで境内が真っ黒な空間に浮かんでいるようだ。

*境内周囲の真っ黒な空間へ踏み出せば、浮遊感を覚えながら探索者の身体は落下して拝殿内の祭壇前、ムーンビーストたちの前に現れることになる。この際落下ダメージはない。→【拝殿】

 

【拝殿】:最短クリアへの道

 朱塗り木造瓦屋根の真新しい建築物。賽銭箱、鈴がある大きなお堂。一般的な神社の拝殿。外開きの扉に錠や閂はない。扉に近づき格子を覗くか扉を開かなければ内部の様子は分からない。

・拝殿内では20+(探索者数)匹の‪ムーンビーストたちが祭壇に祈りを捧げている。《目星》《聞き耳》程度で内部を探る程度、拝殿内に侵入しない限りはムーンビーストたちが探索者に気づくことはない。

・祭壇には一般的な祭具の他にエルダーサインが描かれた護符、のぞき込むとニャルラトホテプ本体と対面出来る神鏡が置かれている。祭壇に近づこうとすると‪ムーンビーストたちが襲ってくる。

*‪全てのムーンビーストを倒し、探索者が護符を手に取れば謎空間から即座に脱出。シナリオクリア(ノーマルエンド)。戦闘後に護符が焼けたり破けたりすると脱出不可。

 *ニャルラトホテプ本体と対面した探索者が発狂せず正気を保っていた場合、かの神は御札を手に取れば謎空間から脱出出来ると教えてくれる。

 #ムーンビーストを目撃する SANc 0/1d8

#大量の‪ムーンビーストを目撃する SANc 1d3/1d10

ニャルラトホテプ本体と対面 SANc 1d10/1d100

 

【御神木】

 見上げるほどの桜の大樹。赤茶けた葉が枯れたような枝に点々と広がる。幹には黒いしめ縄が巻かれている。

・大樹を見上げれば、大きな実がたわわに生って風に小さく揺れているように見える。《目星》でそれらの大きな実が全て人間の頭部であること、頭は生っているのではなく枝に挿してあるものだと分かる。

*《目星》もしくは《医学》で枝に挿してある人間の頭部はザクロの実が割れているように切り裂かれていること、ぐずぐずに腐っているものから真新しいものまであることが分かる。

*《聞き耳(臭覚代用)》で大樹に近づくと血生臭い、肉が腐っているようなニオイが分かっても構わない。

*大樹の下に探索者が来た場合、《幸運》失敗で探索者の上に腐肉、頭部自体が落ちてくる判定なども可。腐った頭部が直撃すれば、もれなくHPとSAN値を減らせる。また猿蟹合戦よろしく、大樹にたまたま登っていたムーンビーストが探索者に腐った頭部を投げつけてくる可能性もあるかもしれない。

 #大樹に成っているものが人間の頭だと分かる SANc 0/1d3

#(KPの任意で)腐った頭部、肉片が探索者へ落下直撃する SANc 1/1d3・HP-1d3

 

【手水舎】

ひさしがある石造りの一般的な手水舎。音もなく水らしき透明な液体が注がれ続け、あふれることはない。ひしゃくが一つ置かれている。

・《目星》で手水舎の透明な液体はただの水であり、手洗いなどに使用するだけであれば何の問題もないことが分かる。

・飲用については、《聞き耳 (臭覚代用)》《医学》の半分の値か《薬学》成功で飲んでも大丈夫な水だと分かる。

*手水舎の水は、御神木でかぶった腐肉や由緒看板の汚れを落とすのに使用出来る。

 

【由緒看板】

 神社の由来文が書かれているだろう白い看板。音声案内用のスイッチボタンが右端にある。

由来文が書かれているだろう表面には黒い汚れが広がっていて、文面は一切読み取れない。

・《目星》《医学》などで由緒看板の黒い汚れが血液がこびりついているものだと分かる。さらに詳しく調べるのならば、この血液は人間のもので、2、3人捌かれた血液全部ぶち撒けたらこんなふうになるのではないかと理解してもいい。

・音声案内のスイッチボタンを押すと、『わらべ歌:とおりゃんせ』が流れてくる。空腹判定と失敗ペナルティが探索者に課せられる。→【*とおりゃんせが聞こえる】

*なお由緒看板の汚れを頑張って落としたとしても、書いてある文章は《ニャルラトホテプとの接触》の呪文言。探索者は、どういう意味の文章か分からずともおぞましい文言だと直感的に悟ってしまう。唱えれば、探索者は光りに包まれていつのまにか拝殿内の祭壇前にいる。→【拝殿】

 # 由緒看板の汚れが血液だと分かる SANc 0/1

 #由緒看板の血痕が人間の2、3人分の血液だと分かる SANc 0/1d2

 #由緒看板に書かれた《ニャルラトホテプとの接触》を目にする SANc 1/1d3

 

【*とおりゃんせが聞こえる】:空腹判定と失敗ペナルティについて

『 とおりゃんせ とおりゃんせ

    ここはどこの細道じゃ 天神さまの細道じゃ  ちっと通してくだしゃんせ 御用のないもの通しゃせぬ

    この子の七つのお祝いにお札を納めに参ります

    いきはよいよい かえりはこわい こわいながらもとおりゃんせ とおりゃんせ 』

由緒看板の音声案内、助けを求めて掛けた電話の先、または時間経過などで『わらべ歌:とおりゃんせ』が聞こえてくる。とおりゃんせを歌うのは男とも女ともつかない不思議な声音(*歌唱:ニャルラトホテプ)だ。このとおりゃんせを歌う声を一節でも聞いた探索者はなぜか急激な空腹感に襲われる。

お腹空いた。何か食べたい。食べなければ動けない。食べなければ死んでしまう。何か食べたい。お腹空いた。お腹空いた。なんでもいいから、何か食べたい。

食べたい、食べたいとそればかりが探索者の脳内を締めていく。猛烈な空腹感を抑え込まなければ、探索者は行動ができなくなる。

・シナリオ内での空腹判定は最大7回。一節でも聞けば判定は発生するが、一度の判定はとおりゃんせ一曲ごととする。

①CON×5 ②CON×4 ③CON×3 ④CON×3 ⑤CON×3 ⑥CON×2 ⑦CON×1

時間経過による判定タイミングの配分などはKPに任せる。よほど余計な行動をする探索者ではない限り、シナリオクリアまでに発生する判定は5、6回までにとどめておくべきだ。

・空腹判定成功時はペナルティは特になし。お腹が空いたなあ、と探索者が感じる程度。

・空腹判定に失敗した場合、ステータスか技能にマイナスペナルティをつける。以下の6つから選ぶこと。1d6のランダムでも構わないが、ペナルティが過度に積み重なって探索行動や回避行動に支障が出過ぎないようにKPは考慮すべき。

『HP -1d2』『DEX -1』

『《目星》《聞き耳》《アイデア》一律 -10』

『《知識》《医学》《学問系技能》一律 -10』

『《回避》《応急手当》《技術・戦闘技能》一律 -10』

『《言いくるめ》《心理学》《対人技能》一律 -10』

*空腹によるダメージは《医学》《応急手当》での回復はない。

*空腹判定にファンブルした場合、探索者は気づけばナニカを咀嚼している。なぜか手が痛い、口の中には血の味が広がる。探索者は無意識に自らの手の肉を噛みちぎって口にしていたようだ。(*同行者、探索者が複数いる場合は相手の手などを食いちぎってもよい)

*空腹ペナルティは飲食物を口にして、満腹感を得るまで食べることが出来れば解除される。ただし判定数値のリセットはない。

#空腹判定にファンブルして自ら(同行者)の体を噛みちぎる SANc 1d3/1+1d6・HP-(1+1d3)

 

【千本鳥居】

朱色の鳥居が連なる石畳の道。境内同様光源はないのに明るい。ゆるやかに蛇行しているのかその先は見通せず、まるでどこまでも道が続いているようにも見える。

・千本鳥居の道の距離は境内から休憩処まで徒歩で一時間、休憩処から千本鳥居の終点まで一時間程度とする。

・千本鳥居の道幅は狭く、大人ひとりが少し余裕をもって歩ける程度だ。鳥居の高さもまちまちで気をつけて通らねば頭をぶつけそうだ。(*具体的に言うならばSIZ15以上にDEX-1程度の補正がかかる)

・《目星》で石畳に点々と血の跡が続いていることに気づける。(*血の跡は【休憩処】に続いている。《追跡》《目星》で血の跡をたどり、休憩処への脇道を見逃さずに済む)

・《目星》で鳥居の朱塗りが少しまだらに赤黒くなっていることが分かる。さらに《医学》などで詳しく見るのならば、赤黒い部分は血や皮膚片が混ざり髪の毛らしきものも塗り込められているようだとも気づける。

#鳥居に塗り込められた血と髪の毛に気づく SANc 0/1d3

 

【千本鳥居を行く①】:シナリオ前半の進め方

シナリオ前半は目覚めた探索者が正気度をじわじわ削りながら境内を出て、空腹判定をしつつムーンビーストに追いかけられながら千本鳥居を通り、休憩処にたどり着いてNPC佐倉七奈に会うことを想定している。一応。

・なかなか境内を出ようとしない探索者には拝殿からムーンビーストが数匹飛び出してきて襲いかかるなどして、千本鳥居へ逃げるよう誘導してもいい。

*ムーンビーストのSIZ(→【追跡者:ムーンビースト】)では千本鳥居を楽に通り抜けることは出来ず、鳥居に嵌まる場合もある。ということをKPは念頭に置いてほしい。戦闘は回避出来る。

・空腹判定とムーンビーストに追いかけられる以外に千本鳥居内でイベントは特にない。ロールプレイで徒歩一時間の距離をもたせるか、空腹判定ごとに時間を飛ばすかはKPの采配に任せる。

・境内から一時間歩いた距離で、《目星》で休憩処に続く脇道を見つけることが出来る。また空腹判定に失敗している探索者は自動成功になるが、《聞き耳(臭覚代用)》で空腹をくすぐる炊きたてのごはんの香りが休憩処のほうから漂ってきていることが分かる。

 

【追跡者:ムーンビースト】

千本鳥居の道の途中、突如真っ暗な空間から化け物(ムーンビースト)がぬるりと顔を出す。探索者を見つけると笑い声のような鳴き声を発し、ゆったりと近づいてくる。

・ムーンビーストのステータスはルルブの平均値準拠、SIZは21とする。技能値もルルブ準拠で意思疎通は不可とする。

・探索者の《幸運》失敗、またはムーンビーストの《目星》成功により1d3匹の化け物が姿を現わす。探索者が逃げる素振りを見せれば嬉々として追いかけてくる。

・《回避》《DEX対抗》などで鳥居を何回か抜けると、探索者はムーンビーストが追いかけてこないことに気づく。様子を見に戻るか《目星》で、ムーンビーストが鳥居に嵌まって身動きが取れなくなっていることが分かる。

・戦闘をする場合は上記同様に、何らかの行動タイミングでムーンビーストは鳥居に嵌まって身動き取れなくなる。

*ムーンビーストの出現は探索者がとおりゃんせを聞いて空腹判定をした直後、PLが油断しているだろうタイミングに畳み掛けるのが望ましい。

 #(*初めて)ムーンビーストを目撃する SANc 0/1d8

 

【休憩処】

和風の店構え。平屋の木造建築物。格子窓がある。瓦屋根の軒には『休憩処』の看板がある。引き戸には『ご自由にお入りください。お茶と軽食をご用意しております。』の木札が貼ってある。

・休憩処裏へ回れる道はない。周囲は真っ暗な空間だ。

・《目星》で格子窓から覗けば休憩処内は明るく、テーブルが複数、奥に小上がり、入り口すぐにカウンターがあることとその先に厨房らしきものが分かる。人影は見えない。

・《聞き耳》で休憩処内に人がいる気配があるのが分かる。また《聞き耳(臭覚代用)》で休憩処内から漂ってくるごはんが炊ける香りに、屠殺場のような血生臭いニオイがかすかに混じっていることが分かる。

*空腹判定2回以上失敗している探索者は猛烈な空腹で、技能振る間も無く脇目も振らず休憩処内へ入らずを得ない。

 

【休憩処内のテーブル・小上がり】

6人ほどが座れるテーブル席が4つ、奥に4人ほどが座れる小上がりの座卓席が2つある。休憩処内は一見どこも清潔に整えられている。

それぞれのテーブルや座卓の上には食事処にあるようなポット、湯呑み、それから白い布がかけられた大皿がある。

・《目星》《聞き耳》などで調べればポットの中身は温かいほうじ茶、大皿には一個ずつラップに包まれた小さめのおにぎりが100個近く山盛りになっていることが分かる。

・おにぎりは、まるで子どもの手で握られたもののように小さい。薄い赤飯っぽい色味で肉そぼろのようなものが点々と散りばめられている。

・おにぎりに技能を振る余裕があるならば、《聞き耳(臭覚代用)》でまるで水の代わりに血液で炊いたかのような血生臭いおにぎりだということ、《目星》でラップにべたべたと赤い指紋跡のようなものがつけられていることが分かるだろう。

*空腹判定に2回以上失敗している探索者は技能を振る余裕などなく、おにぎりを見つけたらがむしゃらに食べ始める。食べるだけ食べて一息ついたあとで口の中に残る血生臭さなどに気づくだろう。《医学》《生物学》《料理技能》などを使えば、今自分が食べたおにぎりに入っていた肉が鶏牛豚などのどれにも該当しない食感と味だと分かる。

*空腹判定に成功または一度の失敗の探索者でも空腹は覚えている。一時間近くも歩いていれば空腹感はさらに増しているだろう。POW×5で食欲を抑えられるか判定し、失敗したならば空腹に耐えきれずにおにぎりを食べ始める。

*おにぎりをどの程度食べれば腹が満たされるかはPLの自己申告で構わない。10個でも20個でも好きなだけ食べるといい。

#食べた後に血生臭いおにぎりだと気づく SANc 0/1

 

【休憩処内のカウンター】

カウンターにはブックラックが備えつけられている。店らしいレジスターなどの会計をする設備はない。

カウンターの向こうには小さな流し台と食器棚、作業台がある。作業台の上には業務用の大きな炊飯器が3台あり、中にはおにぎりのものと見られる肉入りごはんが大量に保温されている。奥に厨房につながる開口部が見える。

・《目星》でカウンターを見ると『お持ち帰りも出来ます』の張り紙など、あちらこちらに薄っすらと赤い手形や指跡がついていることに気づく。そのどれもが子どものもののように小さいと分かる。(*赤い手形はどれもNPC佐倉七奈のもの)

・《聞き耳(臭覚代用)》で血生臭さはどうやら厨房から漂ってきているらしいと気づける。

・《聞き耳》《目星》で奥の厨房内で人が動いている気配があることが分かる。

・カウンターのブックラックには十数冊の書籍が並んでいる。《目星》《図書館》で幼児が読むような絵本ばかりが並ぶ中に薄汚いキャラクターノートが一冊紛れていることに気づく。→【*薄汚れたノート】

 

【*薄汚れたノート】

赤い手形指跡がついた薄汚いキャラクターノート。表紙には『さくら なな』とたどたどしい幼い子どもの文字が書かれている。中を開けば絵日記帳らしいことが分かる。

・《図書館》か《日本語(母国語) -10》で読むことが出来る。《知識》で以下の手記に該当する事件に覚えがないことが分かってもいい。

・最初の手記:クレヨンで描かれた母親と四角いものを持った女の子の絵

『おかあさんにかってもらった おかあさんありがとう だいすき』

・中程の手記①:クレヨンで描かれた母親と女の子と小さな子どもの絵

『おとうとのまーくん うまれた わたしおねえちゃんになった』

『まーくんいつもないてる おかあさんこまってる わたしおねえちゃんだからおかあさんたすける』

『まーくんなくとおかあさんもないてる わたしがんばる おかあさんありがとうっていってくれる ななだけがたよりよって』

・中程の手記②:鉛筆で描かれた白黒の女の子と小さな子どもの絵

『おかあさんかえってこない まーくんないてる わたしもおなかすいた』

『おかあさんかえってきた ごはんもってきた おかあさんおしごといそがしいから まーくんはななにまかせるって わたしがんばる』

『おかあさんこない おなかすいた』

『おかあさんきた でもごはんたりない たりないっていったら おかあさんにおこられた ななはおねえちゃんなんだからがまんしなさいって わたしがんばる』

『おかあさんこない まーくんないてる』

『おかあさんこない まーくんないてる』

『おかあさんこない まーくんないてる』

『まーくんなかなくなった よかった』

『おなかすいた』

・最後の方の手記:赤い色で翼の生えた人物と女の子が描かれている

『まーくんたべてたら あかいおひめさまがいた わたしびっくりした おひめさまはたのしそうにわらってた』

『あかいおひめさまは おかあさんもたべなさいっていった たりないならおかあさんもたべればいいよって』

『おかあさんきた たべた おいしかった おなかいっぱいになった おかあさんありがとう だいすき』

・以上の手記以降白紙のページが続くが、《幸運》《目星》でいちばん最後のページ下部に明らかに別人(*赤の女王)の筆跡の流暢な文章が書かれていることに気づける。

『あなたには彼女が人食いのバケモノに見える? それとも憐れで可哀想な人間の女の子かしら?』

#手記の内容に衝撃を受ける SANc 0/1d3

 

【休憩処の厨房】

設備は一般的な厨房で流し台、ガスコンロ、冷蔵庫、調理台などが四方の壁際に設置されている。

厨房の天井にはいくつものフック付きの鎖が垂れ下がり、数体の首のない人間の遺体が逆さ吊りになっている。床にはバラバラ死体と乾いた血だまりが広がり、血生臭さと腐臭に満ちている。

・《知識 1/2》《医学》《生物学》《料理技能》などで、フックに逆さ吊りの遺体は血抜きをされている最中のものだと分かる。

・冷蔵庫内には肉の塊、人間大の内臓が種類ごとにまとめてビニール袋に詰められて押し込められている。調理台、流し台には血まみれの包丁と調理器具、まな板が乱雑に複数ある。流し台の蛇口からはぽたりぽたりと水が垂れている、水は一応出る。ガスコンロには空の鍋やフライパンが置かれている。

・厨房全体に《目星》で冷蔵庫の奥に引き戸があることが分かる。(*ムーンビーストが人間の死体を運び入れる裏口)

・床に《目星》でバラバラ死体は肉が削がれ、骨ばかりになったものも多々あることに気づける。

*人間の死体が血抜きされ、肉が削がれていることに気づいた探索者はこれらが食用の調理であることを理解する。さらにすでに肉入りおにぎりを食べていた探索者は、《アイデア》でおにぎりに入っていた肉はこのように調理された人肉だと察することが出来る。

 #厨房の凄惨なさまを目にする SANc 1/1d3

 #人間の死体を食用に処理されていることに気づく SANc 1/1+1d3

#自身がすでに人肉を口にし、食べてしまった事実を理解してしまう SANc 1d2/1+1d6

 

【*NPC佐倉七奈に出会う】

厨房の床のバラバラ死体に埋もれるように子どもらしきもの(*NPC佐倉七奈)が座り込んでいる。探索者が声をかけると、すぐに立ち上がって笑顔を見せる。

「いらっしゃいませっ。お客さまですか?………それとも、材料のひと?」

舌ったらずな声音と口調は5、6歳かそれ以下の幼い少女のものだが、その姿は異様だ。ボロボロで元の色が分からないほどに赤黒く汚れた服を身にまとい、ボサボサの髪の毛、何年も風呂に入っていないような汚れた身体の子どもらしきもの。そのようなナリで包丁を手に立ち上がる姿はまるで地獄の餓鬼だ。

・《目星》でNPCがバラバラ死体の肉を包丁で削ぐそばから口に運んで食べていることに気づく。

NPCに話を聞けば、自分がなぜここにいるか何をしているのか休憩処の説明を含めて素直に話してくれる。彼女はお腹が空いたから食べているだけで、悪気も悪意も一切ない。《心理学》を使っても言葉の裏や嘘もないことが分かる。

・手記を読んだ探索者はNPCに同情するだろうか。手記を読まずともこの異常な空間から一緒に脱出しようと持ちかけるかもしれない。だがNPCは首を横に振る。ここは彼女にとってお腹いっぱい食べられる楽園のようなところだからだ。探索者がNPCを連れ出したいなら《言いくるめ》など技能を使い、彼女がここから出たいと思わせなければならない。

*もしPLがNPCに連れ出す魅力がないと思っているならば、KPにはなるべくその魅力を指し示してほしい。例えば探索者がNPCと話している時に偶然に厨房の裏口からムーンビーストが顔を出したりすると、探索者とムーンビーストとは臨戦体勢になるだろう。それをNPCが止めると、探索者にとって彼女はムーンビーストを止められる存在となる。そんな状況を作って《アイデア》で気づかせてほしい。

NPCの餓鬼のようなさまを見る SANc 0/1

NPCがバラバラ死体の肉を食べていることに気づく SANc 0/1d3

 #(*手記を読んだ探索者が)手記を書いたさくらななが目の前にいるNPCだと気づく SANc 0/1d3

 

【*休憩処で食事をするか否か】

・肉入りおにぎりを食べると、空腹判定失敗ペナルティを打ち消すことが出来るが正気度が減る。

・肉入りおにぎりはカウンターの張り紙に記載ある通りに持ち帰りが出来て、以降の空腹判定失敗時に食べて腹を満たせばペナルティを打ち消すことが出来る。

*肉入りおにぎりを持ち出すか否かを探索者から言い出すまでは、出来る限りKPから口は出さないこと。持ち出す量は探索者の持ち物、バッグなどの容量による。両手が塞がった場合は技能にマイナス補正をかけること。

#人肉入りだと既知な上でおにぎりで腹を満たす(*その都度) SANc 1/1d3

 

【千本鳥居を行く②】:シナリオ後半の進め方

探索者がNPC佐倉七奈を連れ出して一緒に千本鳥居を歩き、空腹判定をしつつ千本鳥居終点にたどり着き、彼女を連れて帰るか否かを選択することが理想。一応。

NPCを連れていない場合は【千本鳥居①】同様に空腹判定とムーンビーストに追いかけられる以外にイベントはないので、千本鳥居の終点まで時間を飛ばしても構わない。

NPCを連れている場合はロールプレイにて彼女との交流を図るべきだ。彼女は聞かれたら、母親や弟との楽しい思い出を積極的に語る。その際に《心理学》を使えば母親や弟の死を理解していないことが分かる。

・ムーンビーストはNPCを追いかけはしない。また彼女がやめてと言えば追いかけることをやめて、見送ってくれる。

・空腹判定は休憩処を離れたNPCにも適用される。→【*NPC佐倉七奈の空腹判定と失敗時の処理】

 

【*NPC佐倉七奈の空腹判定と失敗時の処理】

NPC佐倉七奈は休憩処を出れば、探索者同様にとおりゃんせを聞くと空腹判定が発生する。NPCのCONは3だ。

彼女は常にお腹が空いているため、NPCの空腹判定数値は一律CON×1とする。

・KPはシークレットダイスでNPCの空腹判定をしてもいいし、探索者の空腹判定が終わった後のPLへ堂々と“今からNPCの空腹判定をする”と宣言してもいい。残念ながらNPCの空腹判定は失敗前提だ、どちらが酷かは探索者と彼女の親密度にもよるだろう。

NPCの空腹判定が失敗した場合、彼女はいちばん近くにいる探索者へ《噛みつき》を奇襲攻撃扱いで行う。最初の奇襲攻撃の《回避》は出来ないがそれ以降の攻撃には対応が可能。腹を満たすまでNPCはその行動をやめない。

・探索者は《アイデア》でNPCの噛みつき行為がただただ腹を満たそうとするだけのものだと気づける。

NPCの噛みつき行為を止めるには探索者が持ち出したおにぎりを10個差し出せばいい。ただし空腹判定失敗都度、彼女はおにぎりを10個たいらげる。

*おにぎりを持ち出していない場合、探索者が反撃してNPCの行動を物理的に止めても構わない。上手く気絶状態にもっていけるのならばやればいい。ただし彼女はHP4しかない幼い少女だ、下手をすれば殺してしまうだろう。

*探索者が自らの血肉をHP2+1d3分差し出すなど、他にNPCを止める手立てがPLにあるならばロールプレイを絡めて挑戦してみればいい。

#友好的だったNPCが噛みついてきた SANc 0/1d3

NPCを殺してしまう SANc 1d3/1+1d8

NPCが探索者の血肉を食べているさまを見届ける SANc 0/1d8

 

【千本鳥居の終点】

一際大きい鳥居が見えてくる。その先は真っ白な神々しい光に満ちている。

鳥居の手前は広場のようになっていて、中央にはティーテーブルと椅子が置いてあり、煌びやかな装飾品と気品あふれる真っ赤なドレスを身につけた女性(*赤の女王)が優雅に腰掛けている。

赤の女王は探索者を見つけると、「遅かったわね、待ちくたびれたわよ」と愉快そうに微笑む。探索者とともにNPC佐倉七奈がいた場合、「七奈ちゃんも一緒なの?」と少し不思議そうに小首を傾げる。

NPCを連れていない探索者の場合、赤の女王は愉快そうにとおりゃんせを口ずさみ始める。探索者に空腹判定が発生する。空腹を覚える探索者に赤の女王は光あふれる鳥居を指差して「お通りなさいな。早く行かないと閉じちゃうわよ?」と微笑む。彼女の言う通りに鳥居をくぐれば、シナリオクリアになる。→ノーマルエンド

NPCを連れていた場合、赤の女王はNPCに向かって「七奈ちゃん、どうして出ていくの?ここにいればいつまでもお腹いっぱい食べられるのに」と引き留める。NPCは命の恩人である大好きな“あかいおひめさま”に言われて心が揺らぐ。対して探索者はNPCに《言いくるめ》などを使ってもいいし、ロールプレイで赤の女王とNPCを引き離してもいい。

・最終的に探索者とともに行くかどうかを決めるのはKPでありNPCだ。これまでのロールプレイで彼女と十分に信頼関係を築いていれば、NPC佐倉七奈は探索者とともに行くことを選ぶだろう。赤の女王は少し呆れたように息をついた後で探索者とNPCに手を振り、「さようなら……楽しかったわ。機会があればまた会いましょうね?憐れで憐れで可哀想な人間の女の子ちゃん」と笑顔で見送る。→トゥルーエンド

*探索者がNPCを連れていない場合で、一度でもNPCと顔を合わせているならば赤の女王は探索者に対して「……あなたにとって、彼女は人食いのバケモノだったのね」と呟く。さらにNPCを殺していれば、「だから殺したの?」と揶揄するように続ける。だが探索者がそれに対して反論しようが何をしようが、赤の女王はもう何も言わない。赤の女王はもう探索者に関心を示さない。

NPCがもし赤の女王の元にとどまる選択をしたならば、二人は探索者そっちのけで楽しい楽しいお茶会を始める。NPC佐倉七奈は赤の女王の膝に座り、ティーテーブルにいつのまにか並んだ御茶菓子の数々を頬張り始める。二人はもう二度と探索者に関心を示さない。

*戦闘をして赤の女王を屈服させる方法も一応ある。しかし赤の女王へ戦闘を仕掛けるためにはPOW対抗し、探索者が勝たねばならない。ちなみに赤の女王はPOW25だ、ステータス技能値はルルブ準拠とする。

 

【シナリオクリア条件】

*ノーマルエンド

・探索者が謎空間から生還する。

*トゥルーエンド

・探索者が謎空間からNPC佐倉七奈を連れ出して一緒に生還する。

 

【エンディング】

探索者は最後の鳥居をくぐると白い光に包まれる。気づいた時には見覚えのある道の古ぼけた小さなお社の鳥居の前に座り込んでいた。

時間を確認すればすでに大晦日は終わり、年は明けている。空腹感も負った傷も綺麗さっぱり消えていた。さっきの出来事は夢だったのだろうかと探索者がふらりと立ち上がると、けたたましいサイレン音とともにパトカー数台と救急車が目の前を走り抜けていった。

パトカーの行く先を見に行ってもいいし、後日ニュースか何かでそれを知ってもいい。探索者は大晦日の夜に近所で痛ましい事件が起こったことを知る。事件は乳児の餓死とその母親の自殺だった。貧困に喘ぐシングルマザーの問題に触れて一時は大々的に報道されたが、その事件はいずれ世間からも探索者の記憶からも忘れ去られていった。

*上記までがNPCに会っていないノーマルエンドになる。

NPC佐倉七奈を知る探索者はその事件に彼女がいないことに疑問を持つだろう。詳しく調べればいずれ『餓死した乳児の遺体が食べられていたこと』『母親は自殺ではなく食い殺されていたこと』『長女が乳児の遺体を食べ、母親を食い殺して生き延びたこと』が分かる。だが、事件の凄惨さや長女がまだ7歳の未成年者であることから厳重な報道規制が敷かれたのだ。

探索者はこの事実に何を思うだろうか?―――彼女は人食いのバケモノか。それとも憐れで可哀想な人間の女の子か。

*ノーマルエンドではNPCは行方不明扱いになっている。報道規制下で密かに捜査は継続されるが事件の不可解さにいずれ迷宮入りになるだろう。

 

【シナリオクリア報酬】

・探索者が無事に生還した 1+1d8の正気度回復

・探索者がNPC佐倉七奈を連れて生還した 1+1d10の正気度回復

・探索者が赤の女王もしくはニャルラトホテプと相対した クトゥルフ神話技能+2%

・探索者がニャルラトホテプ本体を見ても発狂しなかった クトゥルフ神話技能+7%

 

【蛇足なあれこれ補足】

・当卓セッションでの空腹判定タイミングは境内で①、さらに②。前半千本鳥居で③④、後半千本鳥居で⑤⑥。最後に赤の女王の采配で⑦があるかないかといった具合だった。

・余計なことをせず真面目に探索するPLならば、空腹判定タイミングはいっそ千本鳥居に入った後からリアル時間15分か30分ごとの判定でも面白いかもしれない。

・とおりゃんせは無料素材サイトさんで歌声入りの曲が配布されているので、探して。またはKPの美声を響かせて。

・空腹判定失敗による技能のマイナスは危機感を煽るため。ムーンビーストの追跡も同様。

・このシナリオでいちばん大事な判定はNPCの空腹判定だ。なるべく失敗しなければならない。失敗しなければNPCの人食いのバケモノっぷりをさらけ出せない。

・当卓セッションで大量のムーンビーストがいる拝殿にソロで突撃した探索者がいたため、急遽作った最短クリアへの道。当初は護符とか神鏡とかなかった。だから拝殿のあれはルーニー用のクソ対応だと思ってくれて構わない。

・飢餓と幼女→とおりゃんせ→神社→大晦日という連想による舞台設定なだけ。深い意味は特にない。

*シナリオに記載した使用技能などはあくまでも当身内卓セッションでの使用例であり、KPの采配内で逸脱しない程度にご自由にプレイしてほしい。

 

【さいごに】

当シナリオをお読みいただき、誠にありがとうございます。

このシナリオは身内卓で遊ぶために作成したものであり、友人のリアル正気度を減少させるために私が考えうる胸糞とえげつなさをふんだんに取り入れたものです。

いかがでしたでしょうか。よろしければ遊んでいただけたら幸いです。

 

*シナリオの改変はご自由にどうぞ。改変後改変前問わず、当シナリオの自作発言・無断再配布は厳禁です。

*リプレイ化もご自由にどうぞ。ただしシナリオの出展明記は必ずお願いします。リンク表記は任意で構いませんが、シナリオタイトルとシナリオ製作者名の明記だけは徹底してください。


2018/10/06 シナリオ〈とおりゃんせが聞こえる〉公開